
バックカントリー用スキーブーツは大きく分けてATブーツ(ツアリングブーツ)、フリーライドブーツの二つに分類されます。尚、テレマークスキー向けブーツの紹介は当サイトでは割愛させて頂きます。
山岳ツアー等、山での総合的な使用を考慮して開発されているブーツを指します。滑走モードと歩行モードの切り替えができる為「兼用ブーツ」とも言われております。 登山を行うことも念頭に置いて設計されているため、軽さと、歩行モードでの可動域の広さ、そして歩行しやすいソールの形状(反りがあり、ゴム底のブロックソールのものが多い)がその魅力と言えます。 歩行・登山距離が長いバックカントリーユーザーにおすすめです。一方でフリーライド系ブーツに比べフレックスが柔らかく、滑りを重視するスキーヤーには不満が残ります(ATブーツの一般的なフレックスは110以下)。 ほとんどの製品はテックビンディング対応となっています。
(例)SCARPA
マエストラーレRS2
サイズ:25cm~31cm
フレックス:-
ラスト幅:98mm
重量:1,410g/27cm
(例)SALOMON
S/LAB(Sラボ)MTN
サイズ:24.5cm~28.5
フレックス:110
ラスト幅:98mm
重量:1,576g/26.5cm
ATブーツに比べてシェル硬度が高く、カフも深めに設計されています。フレックスは110-130のもの多くで、基礎スキー上級者・エキスパート用の硬度に近いと言えます。 滑走感覚はアルペンブーツに近く滑り重視のスキーヤー、通常のゲレンデでの滑走も楽しみたいスキーヤーにおすすめのタイプです。 上記のATブーツに同じく歩行モードへの切り替えが可能ですが、ATブーツ比べてその可動域は狭くなります。 数時間の登行レベルのバックカントリースキーにはフリーライド系ブーツがおすすめと言えます。 テックビンディングに対応しているモデルと、そうでないモデルがありますので、ビンディングとの適合性は要注意です。 通常のスキーブーツに見た目が近く、通常のアルペンビンディングに装着できそうな印象を持ちますが、装着できないモデルが多く存在することを留意ください。 モデルによってはソールを交換することにより、アルペンビンディングに装着できるものもあります。 また、一般的にATブーツに比べて重量は重いと言えますが、最近ではフリーライド系ブーツでありながらも、1500g/片足を切るブーツも発売されています。
(例)アトミック
HAWX ULTRA XTD130
サイズ:24cm~29.5cm
フレックス:130
ラスト幅:98mm
重量:1,450g/26.5
(例)ノルディカ
STRIDER PRO 130DYN
サイズ:24.5cm~28.5
フレックス:130
ラスト幅:98mm
重量:1,900g/26.5
ATブーツは850g ~1850g程度のレンジで、フリーライド系は最新の軽いもので1400g弱、重いものでは通常のスキーブーツに近く2200 g 程度のレンジとなっています。 登行時の負担軽減と滑走時の俊敏性を考えれば軽量のものがベター言えますが、その分フレックスやその他の機能にも影響が出る為、一概に軽いブーツが良いとは言えません。 他のポイント(自分の求めるスタイル、フレックス等)も考慮してベストマッチなブーツを選ぶことをお勧めします。 最近では技術の進歩に伴い滑走性能が高いブーツであっても軽量化を実現したブーツも発売されてきています。
フレックスはスキーブーツの「硬さ」を指し数値が高いほど硬くなります。レーシング用ブーツは120~150、基礎スキー用では100~130が一般的です。 フリーライド系上級者向けブーツでは110~130のものが多く、基礎スキー上級者・エキスパートレベル向けのものに近いフレックスのものが多いと言えます。 120-130はバックカントリー向けとは言え、それなりに高い技術を要するものであると言えます。 バックカントリーを始めたいが、それほど滑りに自身が無いスキーヤーにはフレックス100~110程度のものがおすすめです(そのようなバックカントリースキーヤーに主眼を置いたモデルも発売されています)。フレックスはメーカーによって基準が微妙に違いますので留意が必要です(一般的には各社の最上級モデルを150として換算している場合が多いです)。
ATブーツ、フリーライドブーツともに、基本的に歩行モードへの切り替え機能が付いています。 右表のように歩行モードでの可動域はATブーツがフリーライドブーツに比べ広い傾向にあります。 最近ではATOMICのHAWX ULTRA XTDシリーズのようにフリーライドブーツでありながら、非常に広い可動域を持ったブーツも発売されています。 また可動域では後ろ方向の可動域の広さも重要になります。 後ろへの可動域が広いほどシール登行でスキー板を前方に出しやすいからです。
種類 | メーカー | モデル | 可動範囲 |
---|---|---|---|
AT(ツアー) | SCARPA | マエストラーレRS2 | 59度 |
エイリアンRS | 72度 | ||
DYNAFIT | TLT7 | 60度 | |
Winter Guide GTX | 60度 | ||
フリーライド | テクニカ | コーチス130 DYN | 44度 |
ノルディカ | STRIDER PRO 130DNY | 46度 | |
ATOMIC | HAWX ULTRA XTD130 | 54度 |
最近のブーツは「ラスト幅」と言うものが示されています。これは足の一番広い部分のの幅を指しています。 90-100mmが一般的なレンジです。ここ最近では各社とも複数のラスト幅をラインナップしており、スキーヤーは自分の足の形状にあったブーツを選択しやすくなっています。 一般的に上級者・エキスパート向けのモデルはラスト幅が狭い傾向にあります(ブーツがしっかりと強固に足を包むことで微細な動をスキー板に伝える必要がある為)。 一方でラスト幅に余裕がありすぎると、足がブーツ内部で左右に動いてしまいスキー操作に影響を与えてしまいます。